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新聞で脳育

かわしま・りゅうた川島隆太
東北大学教授

1959年生まれ。脳トレで知られ、認知症高齢者の脳機能回復やこどもの脳の発達に役立つ研究に尽力している。東北大学加齢医学研究所 所長。

新聞を読んでいるこどもは、読んでいないこどもと比べて全国模試などで平均点が高いといわれています。
東北大学・川島隆太教授の研究で新聞など活字を読んでいるこどもは読んでいないこどもと比べて、学んだことを理解する能力が高いことが明らかになりました。世の中で起きていることを幅広く掲載している新聞は、活字を通して脳を活性化し、かつ、社会を身近に感じ、生きる力を養うツールとなりうるのです。
2020年度からの「大学入学共通テスト」では、従来の「大学入試センター試験」よりも読解力や考える力が重視され、同年度から小中高校で順次導入される国の学習指導要領総則で新聞を教材として活用することを求めているのもそのためです。

今こそ各家庭で新聞をいつでも手に取ることができる環境を整えてあげてください。

読解力に33点の差

経済協力開発機構が2018年に行った15歳学習到達度調査によると、読解力テストで新聞を月数回以上読む日本のこどもの平均点は531点。
498点だった読まないこどもより33点高かった。

平均正答率で最大13.6ポイント差

文科省の2018年度学力・学習状況調査では、新聞を「ほぼ毎日読んでいる」児童・生徒の成績が、「ほとんどまたは全く読まない」層を上回っていたことが分かった。
最も差が大きかったのは、小学6年算数Bの13.6ポイント。新聞を「ほぼ毎日読んでいる」児童の平均正答率は62.3%だったのに対し、「読まない」児童は48.7%だった。
中学3年では、数学Bが10.7ポイント差、国語Aは5.1ポイント差だった。

「向上心の強さ」、購読者のほうが非購読者より13.6ポイント上回る

新聞科学研究所の2018年12月の全国ネット調査によると、幼少期はもちろん、大人になってからも人にとって成長に欠かせない「向上心の強さ」は購読者で57.7%、非購読者で44.1%と大きな差が表れた。

川島教授が東北地方のこどもを対象に行った調査結果をまとめたのが次のグラフ①~③です。

新聞や本を読む習慣があるかないかでそれぞれ①~③のグループに分け、平均を超えたこどもたちは赤く色分け。
成績と、家庭での勉強時間と睡眠時間との関係を集計しています。

❶活字を読む習慣がないこども

平均を超えるには6時間以上の睡眠と
自宅での学習が2時間以上必要

❷ほぼ毎日1時間未満読む

平均を超えるには6時間以上の睡眠と
30分以上の自宅学習でOK

❸ほぼ毎日1時間以上読む

平均を超えるには6時間以上の睡眠と
宿題など30分未満の自宅学習でOK

グラフの赤い部分を見ていただければ一目瞭然。新聞などを読む習慣があればあるほど、自宅での学習時間が短くても平均点を超えています。
読む習慣があるかないかで学ぶ力に大きな差があり、読む習慣のない子は大変な努力をしなければ、授業についていけないのです。
スマートフォンは、
新聞や本などと異なり長時間使うことで脳の発達を阻害し、学ぶ力がはぐくまれないという研究結果も明らかになっています。
スマートフォンの使い方には注意が必要です。